湯遊茶々 弐

申し込むだけ申し込んでほったらかしでした……。

映画「告白」を見ました。

劇場公開の宣伝を見て興味をもって、原作は既に読みました。
そのうちwowowでやるからそれまで待とうー。
で、先日放送。録画しておいたのを今日。ネタバレなんで感想はたたみます。


三人の母親が出てきます。
主人公の教師、少年Aの母親、少年Bの母親。

教師……。一番のサイコさんは彼女な気がします……。
娘を理不尽に殺され、復讐を決意。
見事にそれをやってのけます。
ちょっと教師っぽくないキャラですが、自分ルールに準じ、ちょっとクールではありますが、実はいい先生だったんじゃないかと思われます。

でも、少年AとBは地雷を踏んでしまったのです。

少年Bの母親はとてもわかりやすい、子供を溺愛する母親でした。
ただひたすらかわいがっていた。

だから少年Bは、自分のダメなところと向き合えず、何でも人のせいにしていました。

最後に、追い詰められた母親は少年Bと心中を試みますが失敗。
逆に自分が少年Bに殺されてしまいました。もう、少年Bを正してくれる人はいません。
なんか、彼は、最終的に殺人を繰り返すんではないかと思っております。

少年Aは、単なる厨二病だった気もしますが……。
母に捨てられたけっこうかわいそうな子だったのではないかと思います。

でも、ダメでした。
彼が敵に回した彼女は、終始理性的で迷いが無かった。

自分に対して理解を示してくれたクラスメートを殺し、
不本意にも自分の作った爆弾で母親も殺してしまうのでした。

原作での少年Aの母親はいまいちどんな人物かわからなかったのですが(とても利己的な人のように思えました)、映画では、息子を忘れておらず、息子のした事に心を痛め、涙するあたり、思っていたよりはマトモだったようです。ただ、自分本位な所は息子そっくりだったような気も……。

で、教師。

彼女は多分、何事もなければ良い教師だったんではないかと思われます。
子供に対してシニカルですが、だからといって、プロの教師として道を踏み外すような事はなかったのではないかと。

でも、少年A、Bは踏んではいけない地雷を踏んでしまった。

何かを害しようとした時、その相手は必ずしも善良で心弱いものだと思ってしまったのが最大の誤算だったんではないかと。

彼女は娘の復讐の為にはさくっと教師の職を捨てました。
それくらい、娘が大切だったのでしょう。

淡々と生徒に語って聞かせる松たか子の表情。
亡くなった娘の話をするのに少しも顔を歪ませないところが大変不気味です。

色々評価の分かれる映画だと思いますが、原作も含めて私はアリだと思っています。
復讐する被害者家族。
少年法に裁けない少年に自ら手を下す部分において。「さまよう刃」という小説がありますが、それと対局をいく感じです。

命は等しくすべて重くは無いと思います。

でも、誰かにとって軽いと思われる命も誰かにとってはすごく重くなる。

少年A、Bにとって、教師の娘の命は多分軽かったのでしょう。

でも、教師にとってそれはとても重かった。
何にも替えがたいほどに。

逆に、教師にとって、少年AもBも、A、とBの母の命は軽かった。

というお話なのかなあと思います。
原作は終始復讐に対して迷いが無い様子でしたが、映画版のラスト、ひとつぶだけこぼした涙が、彼女の教師として見せた唯一の涙だったのかもしれません。

原作は元々「聖職者」というタイトルで、教師の告白のみで終了しています。
後は想像におまかせしますとい作りで、以降は付け足しなわけです。

作品としてはその方がよかったんじゃないかな……。
と、最後にひっくり返してしまったり。